平松礼二 「不二彩々」

尾形光琳300年忌記念特別展(MOA美術館・2015年)にて、
国宝『紅白梅図屏風』 『燕子花図屏風』と共に光琳芸術の系譜として
作品が展示された平松礼二画伯。

現代琳派の第一人者・平松礼二画伯が絵師となり、
江戸時代の浮世絵の制作技術を昭和・平成に受け継ぐ 摺師・久保田憲一と共に制作した
現代浮世絵作品がこの度完成いたしました。




平松礼二「不二彩々」作品をご紹介いたします。

【作品詳細データ】
絵師:平松礼二
画題:「不二彩々」
限定:100部
画寸:24.9×32.0cm
紙寸:29.3×39.0cm
制作年:2017年
版数:42版63度摺(本金使用)
紙種:越前生漉奉書(紙漉:人間国宝・九代目岩野市兵衛)
サイン:直筆鉛筆サイン
彫師:関岡祐介
摺師:久保田憲一




北斎が挑み世界的作品となった『赤富士』を題材に画題は『不二彩々』。

不二 = 二つに在らず、日本一。
富士の存在感を引き立たせる彩り豊かに描かれた山々にも日本人の美意識が表れています。



春秋 しゅんじゅう
富士の右側には花々=春、左側には紅葉=秋がモチーフとして描かれています。
日本では春秋というと、一年、 年月 としつき 、季節、人の一生・年齢を意味し、
『春秋に富む』という言葉があるように、若く、将来が長いことを意味しています。

不二彩々 春秋

松文様 まつもんよう
百木の長、松は厳寒の冬にも常緑を保つため誇り高き者の象徴となり、
常盤樹 ときわぎ )」と呼ばれて古くから吉祥樹とされています。
また、千年の齢を保つとしてめでたい時に使うだけでなく季節を選ばず用いられる文様です。



青海波 せいがいは
波を扇状の形に描き表す幾何学模様で、大海原に絶えず繰り返される穏やかな波のように、
平穏な暮らしがいつまでも続くようにという願いを込めた吉祥文様。
雅楽の舞曲として源氏物語にも登場します。




和紙は、人間国宝・九代目岩野市兵衛により漉かれる 越前生漉奉書 えちぜんきずきほうしょ を使用しています。

この和紙は江戸時代より浮世絵に使われ、耐久性・保存性に長けています。 職人による絶妙なバレンの力加減で摺る事により、顔料は和紙の中、作品裏面まで染み込んでいます。
これはリトグラフやシルクスクリーンなど他の版画技法では見ることの出来ない、浮世絵木版画ならではの特徴です。

また山々の淵に使用されている本金は、全ての版を摺り終えた後に職人の経験と熟練された技術によって見事な線でのせられていきます。




琳派 りんぱ ()
江戸時代を通じて栄えた装飾画の流派。
江戸初期の 俵屋宗達 たわらやそうたつ が創始、中期の 尾形光琳 おがたこうりん が大成したもので、彼らと関係の深い 本阿弥光悦 ほんあみこうえつ 、尾形 乾山 けんざん らの工芸を含めて扱う場合もある。
狩野 かのう 派・土佐派のような幕府や宮廷の御用絵師ではなく、また世襲の制度をもたず、主として私淑・影響関係によって画系が成立している。
日本の美術の伝統に存する装飾美・意匠美を近世の新しい感覚で追求し、その芸術は 公卿 くぎょう 、大名、町衆(町人)の諸層に受け入れられて発展を遂げ、また近代の日本画・工芸意匠の世界にも少なからぬ影響を与えている。